夜國涼華/PC用 Topへ戻る
個人ACE Topへ戻る


 夜國涼華 (個人ACE)



文責・イラスト:夜國涼華@海法よけ藩国
#09/03/30 HQ取得により評価値更新

画像の上にカーソルを置くと画像が変わります。


■コンテンツ
 ・データ
 ・設定
 ・SS
  SS1/[個人的究極戦線〜屋上編〜]
  SS2/[相棒〜小さなナイト〜]
  SS3/[小さな頃から]

※画像変更の動作にはJavaScriptを使用しています。
 画像変更しない方はこちらから変更後の画像を
 見ることができます。
 変更前の画像はこちらから も見ることができます。

上に戻る  



 データ


L:夜國涼華 = {
 t:名称 = 夜國涼華(ACE)
 t:要点 = ドレス,涙,ロープ
 t:周辺環境 = 屋上
 t:評価 = 全能力20
 t:特殊 = {
  *夜國涼華のACEカテゴリ = PLACE,個人ACEとして扱う。
  *夜國涼華のみなし職業 = 泥棒猫,学生,忍者,魔法戦士としてみなす。
 }
 t:→次のアイドレス = 真夜中のお茶会(イベント),甘えてみる(イベント),ささやかなデート(イベント),伝書鳩(アイテム)

○可能特殊
*忍者は白兵戦行為ができ、この時、白兵戦の攻撃判定は評価+2され、燃料は必ず−1万tされる。
*忍者は侵入行為をすることができ、この時、侵入判定(幸運)は評価+2され、燃料は必ず−1万tされる。
*学生は戦闘時AR7以下の際に任意の評価を評価+2することができる。(燃料は消費しない)
*泥棒猫は夜間戦闘行為ができ、この時、攻撃、防御、移動判定は評価+1され、燃料は必ず−1万tされる。
*泥棒猫は白兵戦行為ができ、この時、攻撃、防御、移動判定は評価+1され、燃料は必ず−1万tされる。
*泥棒猫は変装ができ、指定が基本職業(はじめに取ることができる職業アイドレス)であればリクエスト制限を受けずに参加できる。
 基礎職業アイドレス
  猫妖精・犬妖精・剣士・理力使い
  ドラッガー・サイボーグ・歩兵
  パイロット・整備士・医師・忍者
  魔法使い・バトルメード・学生
*泥棒猫は侵入行為ができ、侵入行為(判定:幸運)時、判定は評価+3される。
*魔法戦士は白兵戦闘行為ができ、この時、白兵戦の攻撃判定は評価+2され、燃料は必ず−1万tされる。
*魔法戦士は防御判定では評価+2され、燃料は必ず−1万tされる。
*魔法戦士は詠唱戦行為ができ、このとき、判定において評価は+2され、燃料は必ず−1万tされる。

○評価値
体格:筋力:耐久力:外見:敏捷:器用:感覚:知識:幸運
22:22:22:22:22:22:22:22:23
#PC夜國涼華の所有アイテムにクローバーのしおり(幸運+1)があるため
#所有根拠:http://maki.wanwan-empire.net/owner_accounts/641/object_registries
#HQ取得により全能力+1
#派生元 夜國晋太郎HQ取得によるHQ継承により全能力+1
#HQ取得根拠URL:http://syaku003.appspot.com/entry/show/39044
#個人取得HQ根拠URL:http://farem.s101.xrea.com/idresswiki/index.php?00096-01%A1%A7%CC%EB%D4%A2%CE%C3%B2%DA


装甲:白兵:詠唱戦:侵入行為
22:27:24:28

防御判定
24(白兵戦時:25、夜戦戦闘時:25)

移動判定
22(白兵戦時:23、夜戦戦闘時:23)

夜間戦闘(攻撃)
23

(学生の特殊にあるAR7以下にかかる修正は加味されていません)

上に戻る  



 設定


名前夜國涼華
よみやごくすずか
性別女性
年齢晋太郎と同級生
身長154cm
誕生日10月14日
血液型B型
所属海法よけ藩国
家族兄・嘉納
好きな人夜國晋太郎
特技お茶を煎れる
高いところからの降下
好きな食べ物ハンバーグカレー
苦手な物高いところ・怖い話
その他晋太郎に会いたくてこの世界へ迷い込んだ女性。
晋太郎に対して愛を惜しまない。
晋太郎を追いかけるためなら、男装して男子校に侵入してしまうくらい、ある意味怖いもの知らずで、前しか見ていない時の突進力は何気に半端ない。(周りを見ないので要注意)

家族は海法よけ藩国で摂政を勤めている兄・嘉納。幼い頃より仲のいい兄妹。よく兄のひざの上に座っては、一緒に読書をしていた。(ただし読むのは微妙に少女が興味を示さないような政治や戦争・兵器などの書物ばかりだった)

普段の服装は、ドレスのような長いフレアスカートのものが多い。
ズボンを嫌い、基本的にはどこでもスカート。
ズボン嫌いの理由は、股上が長いという身体的コンプレックスからだったりするが、純粋にスカートが好きで着用しているのもある。
アクセサリーといったものはほとんど身に着けないのだか、唯一胸には必ず、ある年のクリスマスに晋太郎からもらったペンギンのペンダントを身に着けている。
森国人特有の細さはあるが、スタイルも悪くない。しかし、154cmという、あまり大きくない身体にも少しコンプレックスを感じている。
せめてあと10cmあったら戦士姿も様になったのに…とか思っている。

日本茶から紅茶まで、いたる種類のお茶を入れるのが得意で、料理などに合わせてお茶を用意しては振舞う。
しかし、お茶を煎れる最大の目的は、晋太郎が一息つけてもらいたい。美味しく飲んでもらいた、その一心だけ。
料理は出来る(ラブ弁やサンドイッチを作ったりしているので)が、作るよりは晋太郎が作った料理を食べる方が幸せを感じる。
好きな食べ物はハンバーグカレー。(こちら参照)
晋太郎が好きかな、と思って最近は和菓子にも凝っていて、季節の和菓子を探しに行っては晋太郎に差し入れたりしている。

勢いと成り行きから、地上100mの高さから降下、などといった離れ業(?)をしてしまったが、実は本人、典型的で筋金入りの高所恐怖症。
また、かなりの心配性で、国内治安に晋太郎が出撃した際は数日、使い物にならなかったほど。

手紙をちまちま書くのが好き。学校へあまり乗り込むことが出来ないなら、せめて晋太郎と文通したいとか言っていたり言っていなかったり。
若干、愛情表現を表に出すのが苦手(というか、拒絶が怖い)ため、初めてのキスは椅子に腰掛けている晋太郎の額にするのが精一杯だった。(こちら参照)
護民官慰労会にて、抱きしめ祭になった際は晋太郎の「いいなあ」に、ちょっと頑張ってみた。でも、上半身裸の晋太郎に抱きついていたため、後から思い出して後日あわあわしていたとかいないとか。(こちら参照)

上に戻る  


 SS


 個人的究極戦線〜屋上編〜 SS1


 肌を撫でる風。木々をも隠す夜の闇。闇に浮かび上がる月と星々。
 そんな自然と闇に囲まれた、そこは神聖にて静粛な修道院系全寮制男子校であるノライディン・シンタロ校である。
 夜風が静かに吹くシンタロ校敷地の中にある、100mはあるという高さの建物のその屋上に一本のロープを片手に震えている少年らしき姿があった。

「こ、怖いよ…高いよ…なんでこんなに高いの、ここ…」

 涙目で震えている声は、よく聞くと少女のようでもある。


 細く小柄な身体を少しぶかぶかなシンタロ校の制服に身を包み、屋上の中央でへたれ込んでいる、その少年。
 手にしているロープにまでその震えが伝わっているのが見て取れる。

 ロープはその屋上から垂れ下がり地上へと伸びていた。どこか目的へと向かって。

 確かに目的へと向かっているであろう、そのロープをしっかり結び付けれる場所は、屋上にある鉄の飾り柵があるだけ。
 しかし怖いのか、その柵へ近寄れず、身体を震わしていたのだった。


 この少年、いや女子禁制であるこのシンタロ校へ男装し潜り込んだ女性−夜國涼華は典型的で筋金入りの高所恐怖症だった。
 どれだけ典型的で筋金入りかというと、地上2m以上の高さから下を見下ろすだけで足が竦み、地上から高い建物を見上げると目眩がし、バーチャル体験で高い所から落下とゆうシーンで泣き出し、標高800mほどの山へ登ったはいいが山頂から下界見下ろしたらそこから動けなくなった(実話)などなど、逸話を出せばまだまだある、それくらいともかく高い所がダメだった。

 そんな涼華が、なぜこんな高い所にいるかと言えば、その目的はただ一つ。

 逢いたい人がいるから。

「晋太郎さん、怖いよ、高いよ…どうしよう、どうしようっ」

 恋い焦がれ、男装までして追い掛けた、愛しい人−玖珂晋太郎。
 彼を追い、このシンタロ校に男の子として潜り込んだまでは良かったのだが、「玖珂様」と呼ばれ、崇め奉られてるのではないかと思われるほどの、取り巻き達の鉄壁なガード。
 姿は確認出来るのに言葉は交わせないこのもどかしさ。

 涼華の小さな脳みそと身体ではその鉄壁を突撃できず、先日など晋太郎の部屋へ夜ばいかけようとして失敗し、5階から突き落とされてしまった。

 その時の浮遊感を思い出せば、また泣きそうになるが。
 恐怖と想いの狭間、正面からではダメ、地上からもダメ。
 涼華が悩み悩んで考えたのが、屋上から行く、とゆうものだった。

 5階建ての建物の屋上からなら、が、頑張れそうな気がする。
 そんな安易な考えからだったのだが…

 まさか屋上登ったら地上100mの高さだったのは予想外だった。

 5階建ての屋上からロープ伝う方法だって、涼華からしてみれば勇気を強く要した。
 それが建物登ってみたら、予想を遥かに凌ぐ高さだったのだから、もう泣きそうである。

(頑張れ、あたし。下は見ちゃダメ、見ちゃダメ…)

 みぃみぃ泣きながらはいつくばり、柵へと進む。
 この高さだ、落ちれば晋太郎に会える会えないどころの問題ではない。
 震える指を叱咤しながらロープを結わく。
 晋太郎へと続くただ一つの道。それをこれでもかときつくきつく結び、深呼吸をした。

 涙目と言うか、もう溢れる涙が止まらない。
 涙でガビガビになった目元を拭い、大丈夫、と呟くとロープを伝い身を闇へと投げ出した。


 きっと、絶対、一生で一回きりの大降下。


 /*/


 落ちれば全てが終わる。

 そんな恐怖の中、どれだけの時間をかけて、ロープを伝い降りてきただろう。
 指は小刻みに震え、腕は痺れて感覚もない。
 長い恐怖に、涙を抑えられず、また拭うことができなかったその涙はシャツの襟に染みを作っていた。

 もう少しだから、と言い聞かせ、ついにそれは微かに見えてきた。

 下など見れるわけもなく、恐怖を極力抑えようと、目線は斜め下の壁へ向けるのがやっとな状態の中、微かな光を漏らす窓が見えてきたのだ。



 窓枠に足をかけ、静かに窓を開けようとして、ロープから指が離れてくれないことに気付く。
 落ちないようにロープを強く握り締めていた掌は、白くなっているのが見えていた。

 涼華は仕方なく、ロープを握ったまま、そっと窓を押すとそれは内側に開いた。
 室内に着地して、初めて指の緊張が溶けた涼華は、やっとロープから手を離し、今だ止まらぬ涙をブレザーの袖で拭った。

 目に映る、見知った背中。
 机にある小さな明かりを頼りに本のページをめくる指。

 やっと二人きりになれた。
 やっと声が聞ける。

 恐怖とは違う涙が溢れてきそうになって、我慢した。


 笑顔は作れるだろうか、泣き濡れた顔はブスだから見せたくない。
 そんなことを思いながら、その背中に声をかけた。
 想いを強く込めて。


「晋太郎さん…」


 振り向いた青年。
 大好きな微笑み、大好きな声、その存在。
 やっと追い付いた。



 −涼華にとって、たった一つ譲りたくない世界が、そこにあった−

【END】
上に戻る  



 相棒〜小さなナイト〜 SS2


 小さな腕を伸ばし、そっとお気に入りのテディベアを手に取った。
 昔、兄から買ってもらったぬいぐるみだ。

「シンタロウ、今日ね、晋太郎さんをお見かけしたよ」

 森国人特有のエルフの耳をぴるぴるとさせ、細い腕でそのテディベアをぎゅーと抱きしめる少女。
 薄手のワンピースを部屋着として着込み、テディベアを抱きしめる様は、愛らしく幼さを助長させ、とても少女らしい仕草に見える。

 少女−夜國涼華がいる場所を除けば。


 少女が今いる部屋は、ノライディンシンタロ校内にあるコスケ寮という、男子しかいない寮の一室だった。

 この学校は、女人禁制の男子校。
 寮は二棟あるが、その両方とも男子寮で、全ての部屋が二人部屋だった。
 涼華は恋焦がれた青年に会う、その目的のため、そこが男子校だと知っていながら男装して潜入した。
 幸いにもあてがわれた部屋に同室者がおらず、そのため日中胸に巻いているさらしも、部屋でくつろぐ時には外していた。

 本当ならば、室内でもズボンなどを着用する方がいいのだろうが、ズボンが苦手な涼華は、せめて寮の部屋の中くらいは、とこっそり男装を解いていた。


 元々が二人部屋のため、勉強机もベッドも2つあり、クローットも私物を個々で管理できるよう2つあった。
 そんな一人では少し広いと思うような部屋の隅に、少し大きなレトロな風合いのトランクが一つ。
 衣類も入っているが、そのトランクのほとんどの幅を取っていたのが、このテディベアだった。

 全長約85cm。胸にギンガムチェックの大きなリボンを付け、全身はキャラメル色をした、大きなくまのぬいぐるみ。
 ぬいぐるみに名前をつけるのが好きな涼華だが、この名前を付けたのは涼華の好きな青年の名前を知る友人だった。
 涼華の好きな人の名前から「シンタロウ」と名付けられたこのテディベアは、時に涼華に添い寝し、時に涼華の愚痴を聞き、そうしていつもそばにいた。

 男子校に一人で乗り込むには、本当に一人では怖くて寂しくて。
 だから涼華は、シンタロウをトランクに詰めて、連れてきていたのだった。


 ちなみに、トランクにシンタロウを詰める際、なかなかトランクが閉まらず、大騒ぎだったが…



 涼華は身長があまり高くない。
 その方が可愛くていい、と言う人もいるが本人は何気に気にしている。
 森国人という、体格が細い人種であるのも、その身長の低さを際立たせていた。
 その為か、全体的に身体のパーツも小さかった。目を除いて。

 そんな涼華の小さな手のひらは、テディベアをしっかり抱きしめていた。
 そのまま部屋のベッドにのり、ふにーとなる。

「シンタロウ、どうしよう。なかなかに難関だよー」

 少し涙目でシンタロウに愚痴る。

「晋太郎さんの周り、すごい取り巻きのお兄さんばっかなの。特に鳥栖さんっていう、晋太郎さんよりおっきいお兄さんが、ちょー邪魔するの!」

 昼間の出来事を思い出して、ちょっとムッとなった涼華はさらにシンタロウを抱きしめる腕の力を強めた。

 まず、体格から勝てない。
 鳥栖の身体も細いが、涼華の身体はそれ以上に細い。
 身長など比べるまでもなく、鳥栖の方が高い。
 そのため目の前に立ちはだかられたら、鳥栖の身体で晋太郎の姿が見れないほどだった。
 初日などシンタロ寮の5階から外に放り投げられたのだがその時、鳥栖は涼華の小さな身体を軽々と持ち上げたのだ。

 うーうー、と唸る涼華。

 初日に無謀(?)なことをしたため、目的の部屋の前の警備が強化されてしまった。
 そんな初日の夜のことを思い出し、ふと考えた。

「ねぇ、シンタロウ。あの時、福岡さんがおっしゃった言葉はどういう意味なんだろうね?」


 5階という高さから落とされ「助からない!」と思った瞬間、涼華を受け止めて助けてくれた青年の言葉。


「逢いたい者がいるなら、チャンスを待つことだ。ここではいつも、忍耐力が試される」


 忍耐ってなんだろう。
 涼華はうんうん悩みながら、シンタロウを抱きしめ、パタリとベッドに倒れこみ、そしてそのまま眠ってしまった。


 /*/

 くしゅん、と自分のくしゃみで目が覚めた涼華は、目覚めると毛布が掛けられていて「??」状態で朝を迎えた。

 /*/

 涼華が校舎へいる間、シンタロウは日当たりのいい窓近くに、勉強机に備え付けられている椅子に座らされ、日向ぼっこをしている。

 ぽかぽかと暖かい日差しにあたり、毛並みをふかふかにさせたシンタロウを少し大きな手の平が持ち上げる。

「あの子のこと、よろしくね」

 その人は、一言そうシンタロウに託すと、一つ唱(うた)を詠(うた)って消えた。


 それはとても優しい唱(うた)だった。

 /*/

 そして、今日も今日とて、小さな身体は戦っていた。

「今度こそ、絶対、晋太郎さんと逢うんだからー!!」

 えぐえぐ泣きながら、シンタロウに愚痴る涼華。
 今日もバトルに負けたらしい。

「鳥栖さん、酷いのー。容赦ないのー」

 晋太郎に近付こうとしては鳥栖に跳ね除けられる、を続けてもう何日たっただろう。
 正当法ではダメ、寮は警備強化で近付けない。地上からも無理っぽい。

「図書館で、晋太郎さんが読んでたご本、見たかったのに、手に取れなかったの」

 くすん、といいながらシンタロウをぎゅーぎゅー抱きしめる。
 目の前にいるのに何も出来ないこのもどかしさ。
 シンタロウにあれこれ言いながら、「あ!」と思いついた。

「よし、地上がダメなら屋上よ!!」

 あたしすごい!とか自画自賛(?)して嬉しそうにロープを手に入れる算段を練っていた。

「シンタロウ、あたし、高いトコは怖いけど、5階ならどうにか…が、がんばれそうな気がする」

 ちょっと想像して倒れたが、持ち直す。

「明日の夜、決行よ!屋上からロープ垂らして、外の窓から晋太郎さんのお部屋に侵入するの!シンタロウ、見守っててね」

 /*/

 しかし、涼華はその作戦が予想外のものになることを、その時は知る由もなかった。

 /*/

 翌日。
 色々、予想外なことはあったが、無事、想い人に逢えた涼華。

 進入したシンタロ寮から無難に抜け出すため、二人羽織で屋外へと出た涼華と青年はシンタロ寮とコスケ寮の間で少しだけ言葉を交わすと、闇にまぎれて別れた。


 部屋へ戻ると、さきほどまで青年と密着していたためにドキドキして苦しい胸を楽にする為、制服を脱ぎさらしを外して部屋着に着替えた涼華。
 さっそくシンタロウに報告した。

「晋太郎さんに逢えたよーー」

 シンタロウを抱きしめると、そのままベッドに倒れこむ。

「良かったよ。あたしのこと気付いてくれてたよ」

 しっかり抱きしめ、呟く。

「嬉しい、やっと…」

 少しあふれる涙。
 そして、涼華はおもむろに起き上がると、荷造りを始めた。


 元々、青年に逢うためだけに潜入したのだ。
 あまり長居はできない。
 戻れば本来通っている学校もある。

 そうしてあとはシンタロウを入れるだけ、にして就寝した。

「シンタロウ、明日はお家に帰りましょうね」



 学生が授業に入る頃。
 こっそりシンタロ校を抜け出した涼華は、最後に空を見上げた。

 そこには眩しく美しい青空が微笑んでいたのだった。

【終わり】
上に戻る  



 小さな頃から SS3


 涼華は小さな頃、歳の少し離れた兄、嘉納の膝の上に座り、よく一緒にご本を読んだり勉強したりしていた。
 内容は、幼い少女が興味を示すものなど何一つ無い。戦争と政治。それらに携わる書物と、時々魔法とよけ藩国や森国人の歴史。
 どちらかと言うと魔法などのお話の方が好きな涼華は、戦争関係の書物を兄が読んでいると、時折飽きては自身の膝の上にノートを広げてお絵かきなどをする。

 嘉納は、というと歳が離れているこの妹をとても可愛がっていた。
 妹には、しっかりした男性と結婚してほしい、とも願っていたし、妹にもよく「強くしっかりした、たくましい男性のもとにも嫁ぐのだぞ」と言っていた。

 それがこの兄妹の日常だった。


 ある日、兄が読む法律の本に飽きた涼華は、いつものようにノートを広げて何やら書き始めた。
 それに気付いた嘉納は妹が書くそれを覗き込んで、見ていた。


しょうらいのゆめ

だいすきなしんたろうさんのおよめさんになりたいです
いっぱいまほうをおべんきょうしてしんたろうさんといっしょにまほうをつかいたいです


 固まる嘉納。



「涼…」
「なぁに?おにいさま」

 きょとん、と見上げる涼華。
 にこにこと微笑む姿に、一瞬ほだされそうになったが、ノートにある見知らぬ名前を思い出し、止まる。

「その『しんたろうさん』ってのは、誰だ…?まさか…」

 まさかどこぞの馬の骨なんじゃ、と言いそうになって涼華の方を見ると、その涼華は兄の不安をよそに、満面の笑みを見せた。

「えへぇー、あのね、あのね、へいかのごほんにいた、おにいちゃんなの」
「ん?」
「すっごくきれいでやさしくてつよいおにいちゃんなの」

 嬉しそうにいいながら、兄の膝から降りると、近くの本棚から数冊の本を持って戻ってくると「はい」と言ってその本を嘉納に手渡した。


 その本には統一したタイトルがついていた。

『式神の城』


 嘉納に本を手渡した涼華は、うんしょ、といいながらいつもの定位置−兄の膝の上−に戻り、その本をパラパラと開いて見せた。

「これよ、しんたろうさん!」
「涼…このような、ひょろっこい男は認めんぞ」
「すず、しんたろうさんじゃなきゃ、いやだもん!」
「だいたい、どこの馬の骨とも判らん男など…」
「いや!すずはしんたろうさんのおよめさんになるのよ!」

 うわぁん、と泣きながら嘉納の膝から降りた涼華は叫んでいた。

「おにいさまのわからずや!だいっきらい!」

 盛大に大きな声で泣きしながら、涼華は書斎を出て行ってしまった。

 /*/

 その日、妹は初めて、兄に反発した。

 /*/

 幾年かすぎ、摂政として法官として日々忙しく過ごす嘉納。
 気付けば妹も学業の傍ら、護民官のお手伝いを始めるようになっていた。

「お兄様、お茶をお入れいたしました。一休みなさってくださいです」
「ああ…」

 書斎で法官の仕事をしていた嘉納に紅茶を持ってきた涼華。
 大きくなり、意識も摂政の妹らしく…と思っていたのだが…

 カチャカチャと微かに鳴る食器の音。
 準備が済み、向かい合わせになったとたん、涼華は切り出した。

「お兄様」
「ん?なんだ?」
「あたくし、お見合いに乗り込みます」

 ぶふぅぅぅー、と紅茶を噴出す嘉納。

「俺は見合いの席を用意した覚えはない!」
「お兄様が晋太郎さんを連れてきてくださるのでしたら、お見合いいたしますが、あたくしはお兄様のご用意するお見合いには参りませんですよ?」

 狼狽える兄を尻目に、あるパンフレットを取り出した。

 『グリーンジャケット』と書かれたパンフレットを見て、嘉納は合点した。
 これは、今NWで噂の全国規模お見合いの、それを邪魔しようの会の案内パンフレットだった。

「涼、俺はお前を人の邪魔をするように育てた記憶はないぞ?」
「あたくしだって、人様の幸せの邪魔はしたくありませんわ。でも、晋太郎さんがいらっしゃるのです。晋太郎さんのお見合いだけは何が何でも阻止いたしますわ」
「ふむ…」

 そう、涼華は幼い時、一目惚れした『玖珂晋太郎』を今も想い続け、小笠原の分校へ通ってまで彼を追いかけ、今その小さな初恋を育み始めていた。

 学校も申し分のないところに通わせ、躾も厳しくした。
 兄の言うことも聞くが、自分の意見をしっかり持つ頑固さもあり、早くから自立もしていた。
 仕草も細やかな所まで気配るようになったし、スタイルも悪くない。
 凛としたドレス姿の妹はどこに出しても、遜色ないと思っている。
 しかし、たった一つ、あの時から嘉納と対立し続けていた事があった。
 それが、涼華の想い人、晋太郎のことだったのだ。

 何度も何度も嘉納から「もっと身分のしっかりした男にしろ」「がっしりしたのがいい」と言われるも、頑として「晋太郎さん以外興味はありません」「晋太郎さんじゃなきゃ嫌です」と言い張った。


 ずず、と紅茶を一口飲み、ため息を一つもらす。
 なんというか、頑固だな、と。
 こんなにもずっと想っていることに、その頑固さに、もう怒る気も言い争う気もなかった。

「判った…なら、この兄も連れて行け」
「お兄様…?」

 怪訝そうに嘉納を見る涼華。

「戦闘、とあるではないか。そのようなところ、危なくて涼一人を行かすわけにはいかん。俺が後方支援してやる。ついでに涼の婿に相応しいか、見定めてやる」
「お兄様!」

 そうして、嘉納は、妹の一途さに、折れたのだった。

 /*/

 お見合い阻止成功。
 涼華は「仮面のお兄さんシン」との見合い権利を手にいれたのだった。

 /*/

 順調に、と言えるのかは判らないが、ささやかに静かに想いを育み続ける涼華。
 ある『寮』へ行っていた涼華と久しぶりにあった嘉納は、こう言った。

「涼、晋太郎との交際は認めるが…」
「はい?」
「女のお前が男子校など…学歴はどうするつもりだ?」

 困惑気味にそう言うと、再び黙りこくった。



 まぁいいか。
 妹が幸せならば、と。

【終わり】
上に戻る  


個人ACE Topへ戻る
Topへ戻る